吃音ってどこで起こるか考えたことありますか?
吃音は言葉がスムーズに出ない症状なので、口に問題があると思っていませんか?
実際僕も吃音を治そうと思っていた時は、
- 渡部陽一ばりにゆーっくり話す
- 発音の本を買って発声練習
- 歌のボイストレーニングに通う
- 口を柔らかくしようと風呂場で指で口を左右から引っ張ったり大きく開けるようにマッサージ
と思いつく色々なことをやってみました。
当然吃音は治りませんでした。
それもそのはず、これらは吃音を治す行為ではなく、”発音や声質、滑舌を良くする“トレーニングだからです。
そしていくらこんなことをしても吃音は治りません。
なぜなら吃音は喋る前に頭の中ですでに起こっているからです。
どういうことかというと
人は口で言葉にする前に無意識に頭の中で文字や文章を”喋って”いるのです。
ここで少しワークです。
次の文章を音読してみてください。
その明くる日もごんは、くりを持って、兵十の家へ出かけました。兵十は物置でなわをなっていました。それでごんは、うら口から、こっそり中へ入りました。そのとき兵十は、ふと顔を上げました。と、きつねが家の中へ入ったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがった、あのごんぎつねめが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
兵十は、立ち上がって、納屋(なや)にかけてある火なわじゅうを取って、火薬をつめました。
そして足音をしのばせて近よって、今、戸口を出ようとするごんを、ドンとうちました。ごんはばたりとたおれました。
兵十はかけよってきました。家の中を見ると、土間にくりが固めて置いてあるのが目につきました。
「おや。」と、兵十はびっくりしてごんに目を落としました。
「ごん、お前だったのか。いつもくりをくれたのは。」
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづきました。
兵十は、火なわじゅうをばたりと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。
「ごん狐」新見南吉
いかがでしたか?
音読をするときは、目で見ている文章と実際に声に出している文章は異なっていませんでしたか?
喋りながらも目は次の文章を追っていませんでしたか?
つまりこういうステップを踏んで音読をしているわけです。
吃音はこの頭の中で読む過程で脳内のどこかに不具合があるため、スムーズに読めないのです。
吃音あるあるとして、吃音者なら誰でも経験している“予期不安”というものがあります。
予期不安とは、喋る前にどもることが分かってどもってしまう不安感に襲われることです。
音読をしながら次の文章を目で追っていくと、どもる箇所が分かるのです。
なので、そのどもる箇所の直前で不自然な咳払いや「えー」とか「あのー」とか不要な言葉を挿入して言いやすくすることが多いです。
音読の授業は吃音者にとってはビクビクものなんです。
とは言っても先生方はどうか音読の順番を飛ばすことだけはしないでください。
「どもるからかわいそう」という思いで順番を飛ばすことは返って吃音児を落ち込ませます。
そして音読で言葉に詰まってもゆっくり待ってあげてください。
“どもっても最後まで読めた”という思いを積み重ねることが、吃音児の心を軽くするのです。