吃音が研究され始めて100年以上経ち、考え方や捉え方は大きく変わってきました。
しかし昔ながらの古い考え方、誤解や偏見はまだ広く残っていて、その中の一つに
「吃音になるのは母親のしつけや教育が悪いせい」
といまだに言われている説があります。
この説がまだ残っているおかげで吃音の子どもをもつお母さんたちは責任を感じてしまいがちになってしまいます。
そして悩んで苦しむ現状をずっと見てきました。
わが子が吃音になったときに、情報収集のためネットを使うお母さんは多いと思います。
しかし、ネットの世界でも検索すると未だにこの説が出てくることがあります。
そこで今回は最新の吃音の本や私の経験からその説が誤りであることを説明したいと思います。
お母さんがわが子がどもっていたら不安で心配になるのはとてもよく分かります。
しかし誤った知識で悩んで苦しんでいても子どものためにはなりません。
まずはこのことを第一に知ってください。
「吃音は子どもも親も誰も悪くない」
そもそもどうして「吃音は母親のせいである」という考えが広まってしまったのでしょうか?
私が推測するに
- 吃音は2~5歳くらいで“突然”発症する。
- 子どもと最も長い時間接しているのは母親である。
この2点からではないでしょうか。
この”突然”というのがポイントで、昨日まで普通に喋っていたわが子が突然どもりだしたら親なら誰だって不安になりますよね。
そして子どもと一番長い時間接しているであろうお母さんが
- 私が強く叱ったから。
- 引っ越しで環境が変わったから。
- 仕事が忙しくて寂しい思いをさせてしまったから。
と色々理由を探して自分を責めることが多いのです。
そりゃ子育て中は色んな事がありますよ。
探し出せば理由なんていくらでも見つけ出せます。
また吃音の知識のない周囲の人たち(祖父母や近所の人など)が
- あなたが厳しすぎるから・・
- 仕事を辞めてそばにいてやりなさい。
- 子どもに愛情がないからじゃない?
などと色々(親切心ながらも)おせっかいに口を出してくることが多いのでますます母親は自分を責めてしまいます。
私の場合、祖父と母親が吃音持ちです。
そして母親は保母をしていたことから吃音の知識があり、私がどもり始めても慌てずに医者に診せたそうです。
むしろ祖母の方が吃音に口を出してくることが多く、
「ゆっくり喋りなさい」
「もう一回言ってみなさい」
「歌を歌うように言ってみなさい」
と言ってきたのを覚えています。
これらのアドバイスは逆効果であり、むしろ吃音者を傷つけてしまいます。
そこで私の父母は当祖母に正しい吃音の知識を教えてそういうことを言わないように言ったそうです。
思い返せばある時から祖母にそういうことを言われなくなりました。
このように周囲に正しい吃音の知識がある人がいると吃音者はとても助かります。
では 現在の吃音の考え方はというと・・
吃音のことがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) によれば吃音になりやすい体質があるというのが現在の見解です。
吃音のあるドクターが書いた本でとても分かりやすいのでお勧めです!
2011年に発見された「吃音遺伝子」を持っている子が吃音になりやすい体質であると考えられています。
一卵性と二卵性の吃音のある双子を調査した結果、一卵性の方が両方とも吃音があることが分かりこの説を裏付けています。
もちろん吃音遺伝子を持っている子すべてが吃音になるわけではなく他の要因も関係してくるのですが、まだまだ具体的なことは分かっていないのが現状です。
なにより、私の母親も祖父も弟も吃音もちであることを考えれば、吃音は遺伝するということは分かると思います。
ですので、お母さんがいくら怒っても優しくしても吃音になる子はなるしならない子はならない。
お母さんのしつけや教育方法が原因ではないのです。
私が怒りすぎたから・・・
私が甘やかしすぎたから・・
正反対のことをしているのにどっちも吃音になるっておかしくないですか?
後付けの理由なんていくらでも思いつくものです。
でもこんなことは意味がありません。
それよりも子ども自身に目を向けてあげましょう。
わが子がどもっていると感じたら早めの専門家への相談が一番大切です。
親からしたらわが子が吃音であると認めたくない気持ちもあるかと思いますが、親自身が正しい知識を持つことがひいては子どものためになるのです。
相談先は
- 地域の発達相談窓口
- 言語聴覚士のいる病院
- 「ことばの教室」
- 医療機関
と色々ありますので地元の広報などで確認してみるといいと思います。
そして吃音の本を読んで正しい知識をつけておくことも親自身の不安を解消することにもつながるのでお勧めです。